MESSAGE

– 音の渡り –

昭和33年の春の事
そう
私はまだ小学生
硝子の欠片をローソクの煙りの媒(すす)で黒くして
手が汚れるのもお構いなしに 校庭の真ん中で《皆既日食》を眺めた。
「ほら!だんだんコロナが見えて来ただろう ほーら、ほらほら」
嬉しそうな先生の言葉にみんな片目を譲って空を見上げた。
少し変形だったが、丸い王冠のカタチに思えた。
「ヘー、これがコロナか・・・」
東京タワーが建った年の話である。
武蔵野の少年の“コロナ” の思い出は、
お天道様の外側の美しくまぶしい光の輪の縁だったのに・・・。

さてっと。
55周年記念のコンサートツアーまで3ヶ月かあ〜。
じゃあ
そろそろ腰を いや、声をあげなくては・・・。
コンサートの舞台と言うものは、大パノラマ·スペクタクルです。
(少々言い方が昭和すぎるかもしれない)
それは、現実的な視覚の景色ではなく、
心の端で覗く事の出来る幻想の世界とでも申しましょうか。
過ぎた日のよろこびも、悲しみさえも映し出して、
明日の自分自身を思い描ける。
全ての念(おも)いを心の3Dプリンターで削り出せる
あなたの、あなただけの夢の物語りの世界なのです。
たどり着けなかった愛の行方と
成就できなかった旅路の果てを
如何様(いかよう)にでも描いて頂ける
Personalな空間·瞬間なのです。
さぁ!行ってみましょう、次の場面へ。

令和二年水無月
布施明